水資源・環境研究
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フランス林政における『水と森林』の史的展開序説
古井戸 宏通
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2007 年 20 巻 p. 73-86

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抄録

「水の時代」が森林の重要性に直結していることが世界的に理解されつつある中、「森林と水」の研究を発展させるために、フランス林野行政史において法令・行政機関等の林野に相当する呼称が「水と森林」(以下EF)であった史実について、フランス語二次文献等に依拠し「水」という名辞を通時的に分析した。中世期に、非耕地ないし林野一般を指す便利な表現としてEFが出現して以来、EFの語は絶対王政期以降も法令や諸官制に受け継がれてきた。革命初期に「水」が消えたものの19世紀の林野行政における治山事業、内水面管理の所管から復活したEFの呼称は第二次大戦後、山林学校の名称を除いて消滅した。フランス語のEFの解釈はいわば林野利用権説と治山治水説の二説に大別されるが、EFの意味は時代によって変化している。飲料水源の土壌保全が社会問題となった1980年代以降、山林学校においても名目化していたEFに新たな意味が加わった。

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