水資源・環境研究
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棚田における水利組織の構成原理と領域保全
滋賀県大津市仰木地区の事例より
山本 早苗
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2003 年 2003 巻 16 号 p. 21-32

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抄録

本稿は、これまで水利研究で十分に考察が加えられてこなかった棚田水利を対象として、棚田水利の構成原理とそれが果たす役割を明らかにすることを目的とする。そのために、棚田において雰常に級密な水利用・管理をおこなっている人びとの背後にはたらいている論理と方法を具体的に記述することに重点をおいている。
本研究の調査対象地である滋賀県大津市仰木地区では、「井堰親制度」という独自の水利慣行が残っている。ここでは、「下流」の末端部に位置する水田所有者を「井堰親」とよび、水利管理責任者としていた。このような末端水利固有の管理により、下流まで平等な水の分配を可能にしていた。本稿では、井堰組織の成員間の関係をオヤコ関係として捉えなおし、(1)オヤの固定性、(2)下流の地位の再定置、(3)オヤコの労働関係における特徴をそれぞれ示した。そして仰木地区では、このオヤコ関係を維持することが、結果的に領域としての棚田保全へとつながっていることがわかった。

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