塗装した熱処理木材の表面分析を行い,通常の木材の塗装面との違いを検討した。プレーナー仕上げしたスギ(Cryptomeria japonica D. Don)の熱処理木材(常圧,水蒸気雰囲気下,220℃)に,市販の木材保護塗料(油性2種類,水性2種類)を用いて塗装試片を作製した。算術平均高さ(Sa)は,塗装前,油性塗料または水性塗料で塗装後のいずれの試片も熱処理木材の方が無処理木材に比べ大きかった。塗装後の試片表面の赤外分光分析より,木材由来のピークと塗膜由来のピークに着目し,ピーク高さ比を求めたところ,油性塗料,水性塗料のいずれも熱処理木材の方が無処理木材に比べ塗装した表面に木材成分が多い(塗料による被覆効果が低い)ことが示唆された。今回供試した試片では熱処理木材は無処理木材に比べ,塗装面の表面粗さが大きく,また,木材表面が塗料で覆われにくい傾向があることが分かった。これは,塗装前の熱処理木材の表面の凹凸の程度が大きいこと,撥水性が高いことなどが影響したと考えられる。