抄録
本研究では,伝統的ホゾ-込み栓接合部においてスギ圧縮込み栓を挿入したホゾ-込み栓接合部の強度性能の評価及び2年間の湿度変化によるスギ圧縮込み栓の変形回復特性が接合部の強度性能に及ぼす影響の検証を中心に行った。
接合部引き抜き試験の結果,シラカシ込み栓1本挿入接合部とスギ圧縮込み栓1本を引抜きに対し年輪が平行方向(T-type)に挿入した接合部は,変位 2 mmで荷重が12 kNに到達し,込み栓の中央部分で脆性的な曲げ破壊が起こったが,圧縮込み栓を引抜きに対し年輪が垂直方向(R-type)に挿入した試験体は,変位10 mm,荷重12.5 kNに達するまで破壊は生じず,ホゾ境界部分で込み栓のせん断変形によって降伏した。一方,2年間湿度変化(40-80%RH)させたスギ圧縮込み栓挿入接合部が湿度変化させていない接合部より最大強度,降伏強度,及びエネルギー吸収量が向上したが,シラカシ込み栓挿入接合部は,湿度の周期的な変化によって強度特性が著しく低下した。