セルロース結晶領域の酵素加水分解メカニズム解明のため比較的大きなセルロース微結晶における反応初期の変化を調べた。固定したバクテリアセルロースの微結晶セルロースにTrichoderma粗酵素,セロビオハイドロラーゼI(CBHI(現在はCel7A)),セルロース結合モジュール(CBM)およびチオレドキシン(Trx)との組換えCBM(Trx-CBM)を50℃で10-30分間作用させた。粗酵素処理では微結晶のフィブリル化や末端の先細り,Iαの選択的分解が認められた。CBM,CBHI,Trx-CBM処理では微結晶表面に割れが生じるが,CBMでは浅く,CBHIでは深く,セルロース分解機能を持たないTrx-CBMでも深い割れが観察され,分子間,分子内水素結合にも変化が見られた。酵素分解は,CBMが微結晶表面に吸着して割れを生成後,体積の大きい触媒モジュールがくさびのように割れを拡大すると推論できる。