2010 年 56 巻 6 号 p. 388-396
エノキタケのトランスクリプトーム配列データベースを構築し,これを利用した菌体外酵素のセクレトーム解析を試みた。種々のバイオマスまたは多糖を炭素源とした各培地においてエノキタケを培養し,菌糸体から全RNAを抽出した。得られた全RNAから構築された均一化cDNAライブラリの全配列を第2世代DNAシークエンサにより決定し,トランスクリプトーム配列データベースを構築した。次に,セルロース培地から得たエノキタケの菌体外タンパク質を二次元電気泳動で分離し,トランスクリプトーム配列データベースを利用して,得られたスポットの同定を試みた。その結果,41個のスポットについて対応するコンティグ配列が帰属できたことにより多数の糖質分解関連酵素が同定され,エノキタケのようなゲノム配列未解読菌においてもセクレトーム解析が可能であったことから,データベース化されたトランスクリプトーム配列情報の有効性が示された。