国産材を構造材や内装材に用いた木造の特別養護老人ホームにて,居住環境中の空気質とその経時変化について,実態分析を行った。アクティブ法で測定した居住環境中の空気質は主に「木の香り」の効用が期待されるテルペン類によって形成されていた。内装を構成する各木材からの放散成分を放散試験セル法で測定し,室内空気質形成への寄与を検討したところ,空気質の主要成分のα-Pineneは柱・筋交いのヒノキ材に,約10~40%を占めるセスキテルペン類(α-Muurolene, Calamenene, δ-Cadinene等)は床や野地裏等のスギ材に,主として由来することが示された。竣工から約1年後では,テルペン類の総気中濃度は減少したものの,木質様の香気を形成する一部のセスキテルペン類(Calamenene等)は増加し,主にテルペン類で構成された空気質が保たれていることが観測された。