木材学会誌
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カテゴリーII
地熱乾燥処理がスギ板材の抽出成分含量に与える影響
中川 敏法簗瀬 和彦梅木 孝浩入交 律歌藤本 登留清水 邦義
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2019 年 65 巻 4 号 p. 195-200

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抄録

スギ板材の人工乾燥方法のひとつに,地熱を利用した地熱乾燥がある。本研究では,地熱乾燥によるスギ板材中の揮発成分含量への影響を調査するため,地熱乾燥・中温乾燥・高温乾燥・天然乾燥に供したスギ板材から切削面 (仕上面) を作製し,その酢酸エチル抽出成分をガスクロマトグラフ質量分析計 (GC/MS) で分析した。その結果,21のピークが検出され,このうち16ピークが同定できた。全ピークの総面積を比較すると乾燥方法間で有意差は認められなかったが,β- Caryophllene,Thujopsene,epi-Bicyclosesquiphellandrene,Muurolene,Calameneneなどのセスキテルペン類,Sandaracopimarinal,Ferruginolなどのジテルペン類では統計的有意差が認められた。天然乾燥に比べて,中温乾燥や高温乾燥ではepi-Bicyclosesquiphellandrene,Muuroleneが有意に低かったが,地熱乾燥では有意差は認められなかった。また,Sandaracopimarinal,Ferruginolなどのジテルペン類については,地熱乾燥で最も多く含まれることがわかった。主成分分析の結果から,地熱乾燥されたスギ板材中の揮発成分組成は天然乾燥のそれと比較的類似していることがわかった。

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© 2019 一般社団法人 日本木材学会
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