2021 年 67 巻 4 号 p. 188-196
八ヶ岳高原海の口自然郷内にはサラサドウダンが群生しており,樹齢百年以上と言われる古木も珍しくないが,近年,シカの樹皮剥皮による枯死が顕著化している。他方で樹皮が再生する個体も多いため,被害が深刻だった2015年に,標高約1550mに設定した一辺30mの正方形プロット内を調査した。その結果,プロット内には株立状のサラサドウダンの幹が総計184本あり,シカに剥皮された幹は83本と被害が深刻だったが,このうち80本は樹皮が再生していた。更には全周が剥皮されても,大面積の樹皮が再生した幹が存在した。再生した幹の形成層付近を顕微鏡観察した結果,木部に傷害柔組織が存在したが,継続して木部が形成され,形成層との間に成長輪界は確認できなかった。2019年に剥皮され,同年に採取した部位の表面には生細胞が存在したため,シカによって樹皮を剥皮されても極めて短期に樹皮が再生することが示唆された。