この論文では過去10年間の『福祉社会学研究』に掲載された自由論文
を中心にしてその動向をレビューし、そこから見いだされる福祉社会学の
研究動向の特徴について考察した.レビューの方法として,各論文が依拠
する方法(アプローチ)および分野(テーマ)に着目して論文を分類し,
その特徴を検討した.自由論文について検討を加えた結果,質的研究にも
とづく実証研究が大多数を占めており量的研究は少数であること,ケアや
介護をテーマとする論文が多いことが明らかになった.隣接分野である家
族社会学の学会誌と比較したとき,質的研究の多さとケアなどのテーマに
研究が集中していることは『福祉社会学研究』の特徴であることが指摘で
きる.こうした結果がなぜ、生じたのかにかんする考察を提示するとともに,
議論として,より多様な研究法やテーマにかんする研究が増加するために
学会としてどのような取り組みが求められるかについて若干の提案を行っ
た.