山階鳥類学雑誌
Online ISSN : 1882-0999
Print ISSN : 1348-5032
特集論文:オーストラリア熱帯モンスーン地域における鳥類の生活史と社会生活
オオニワシドリにおけるオスの性的シグナル間の相互作用とメスの選り好みへの影響
沖田 智樹勝野 陽子江口 和洋Richard A. Noske
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2010 年 42 巻 1 号 p. 35-46

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抄録

多くの動物では,オスは複数の手段で求愛ディスプレイを行うことが知られている。このような多重的性的シグナルに対するメスの選り好みについては多くの研究がなされているが,シグナル間の相互作用についてはほとんど研究がない。著者らは,オオニワシドリ Chlamydera nuchalis の求愛ディスプレイを分析し,性的シグナル間の相互作用と,交尾成功との関連を明らかにした。本種ではオスがあずまやを作りメスを誘引するが,あずまやを訪れた雌に対して盛んにディスプレイ行動を行う。あずまやと行動ディスプレイは異なる性格の性的シグナルである。行動ディスプレイには,音声的要素としての「チッチッ」音と,運動的要素としてのあずまやの周辺でのダンスが見られた。「チッチッ」音には3つの異なるスペクトル型 (SS, MS, LS) があり,メスの選り好みに重要な役を果たし,大きく長いLS型の音声をよく発するオスはより多くのメスと交尾できた。この事実は激しいディスプレイは交尾成功を高めることを示唆している。さらに,LS型音声をよく発するオスのあずまやはより大きかった。この事実は,あずまやはメスにオスの激しいディスプレイからの安全な場所を提供し,これによりオスはディスプレイの激しさをさらに高めることができることを示唆している。これらの結果は,異なる種類の性的シグナルが相互に作用し合っていることを示している。

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© 2010 公益財団法人 山階鳥類研究所
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