山階鳥類学雑誌
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原著論文
イソヒヨドリのハビタットとその空間構造―内陸都市への進出―
鳥居 憲親 江崎 保男
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2014 年 46 巻 1 号 p. 15-24

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抄録

イソヒヨドリは,国内ではもともと,崖や岩のある海岸に生息し繁殖するが,近年になって内陸の都市での繁殖が確認されるようになった。そこで,2011年5月から2012年12月までの20ヶ月間,海岸から20 km離れた内陸部に位置する兵庫県三田市のニュータウンでセンサスと行動観察を行なった。本種は調査地に周年生息する留鳥であったが,特に高層建築物が密集する地区に多く出現し,オスのなわばりもこの地区に偏って存在していた。オスは高い場所において高確率でさえずり,隣接オスとのなわばり闘争においては,隣接者よりも高い場所でさえずろうとした。イソヒヨドリのオスは高層建築物をソングポストとして利用し,高い位置からさえずることによって,なわばりの形成と防衛を行なっていると考えられる。また,本種は高層建築物に隣接した草地の地表面で,地表性の小動物をとっていた。したがって,都市においては高層建築物と草地のセットこそが,イソヒヨドリの好適なハビタットを形成しており,本種のハビタットに必要な空間構造は,高さを生み出す崖地形と,これに隣接し地表性動物が豊富に存在するオープングラウンドのセットであることが示唆される。また,人が創り出した崖地形としての高層建築物と芝生などのオープングラウンドのセットを巧みに利用することにより,本種は都市への進出を果たしたのだと考えられる。

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