山階鳥類学雑誌
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原著論文
標識再観察法によるトキNipponia nippon の個体数推定
岡久 雄二永田 尚志尾崎 清明
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2017 年 48 巻 2 号 p. 51-63

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抄録

1981年に日本のトキは野生下で絶滅した。その後,2008年より佐渡島においてトキの再導入が実施され,2012年からは野生下での繁殖が成功している。2015年10月現在,佐渡島に159羽のトキが生息しているとされている。すべての放鳥個体には個体ごとに異なる組合せの足環が装着され,生存や繁殖状況を把握している。野生下で生まれた雛にも足環を装着しているが,全ての雛には足環を装着できていないため,未標識個体も生息している。足環の判読によって個体の生存状況は把握されているが,モニタリング努力量が限られているため,野外での個体数増加に伴って標識個体の観察率も低下する可能性がある。また,年々増加する未標識個体の個体数を正確に把握することは現在の課題である。そのため公表されているソフトウェアMARKを用いて標識再観察法による個体数を推定した。未標識個体の個体数はLogit-normalモデル,標識個体の個体数はPoisson-logモデルを適用した。初めて野生下で繁殖が成功し,8羽の雛の巣立ちが確認された2012年の繁殖期以降,8.48個体(95%CI: 5.89–12.21)の未標識個体が生息していたと推定された。未標識トキの推定個体数は2014年の繁殖期後には30.23羽(95%CI: 19.1–48.0)まで増加したが,徐々に減少し,現在は20.30羽(95%CI: 15.5–26.7)である。全ての調査期間において一貫して,未標識個体の推定個体数は観察個体数より多かった。一方,標識個体の推定個体数は観察個体数と一致していた。2つのモデルより,2015年10月現在,佐渡島島内には放鳥個体109羽,野外生まれ個体41羽が生息していると推定された。今後は標識再観察法による個体数推定をトキの野生復帰事業に導入することが望まれる。

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