2019 年 51 巻 1 号 p. 29-42
日本に西洋生物学が導入された草創期に,トーマス・ブラキストンによって北海道で採集された2点のコジュリンEmberiza yessoensisの標本について,採集者のノートと標本カタログの解析を通じて,(1)失われたと考えられていた標本の再発見,(2)詳細な採集情報が欠落した標本の情報復元を行い,タイプ標本の採集地が函館であることを示した。これらの標本はいずれも種の記載に用いられた標本であり,標本の再発見と採集情報の復元は,日本産コジュリンの分類学にとって重要な情報を提示するものであるとともに,種の分布の歴史的検討や過去の気候に関する情報を提供する可能性を示した。