山階鳥類研究所研究報告
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日本産のコウノトリCiconia ciconia boyciana Swinhoeの棲息数調査報告
山階 芳麿高野 伸二
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1959 年 1 巻 13 号 p. 505-521

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抄録

1.1957年夏南ロデシアで開かれた第X回国際鳥類保護会議においてDr.E.Schüz氏が近年減少しつつあるコウノトリの国際調査を提案し,1958年をその調査年とする事が決定した。我国もこの調査に参加する事とし,日本鳥類保護連盟が主体となって各機関協力の下に全国的な調査を行った。
2.明治以前にはコウノトリは日本に広く分布していたらしい。江戸の社寺の屋上にも営巣したという事が古文献に多く残っている。しかしその後減少し殆ど姿を消し,現在「日本鳥類目録」で承認されている記録,北海道(十勝)•本州(秋田,福井,石川,千葉,横浜,兵庫)•四国(徳島)の中,石川,福井,兵庫のみが近年のもので,他は北海道(1923年)を除けば全て明治前半の記録である。
3.林野庁の1958年コウノトリ調査結果は第1表~第3表に示した。現在棲息及び繁殖が確認されている兵庫県及び福井県以外ではコウノトリが常住している所は発見出来なかった。なお,第3表の栃木県大田原市立羽田小学校所蔵標本はコウノトリではなく,オオハクチョウCygnus cygnusである事が確かめられた。
4.「週刊朝日」の協力によるコウノトリの調査結果によれば,秋田,宮城,石川,福井,兵庫,滋賀,大阪,山口諸府県における記録の報告があったが,新らしいコウノトリの常住地は発見されなかった。最も報告の多かった秋田県のものはアオサギの誤認と思われる。唯石川県及び山口県では近年迄コウノトリが繁殖していたらしい事が推察された。
5.兵庫県出石附近のコウノトリは明治27年に一番が再発見されてから,次第に数を増し,昭和5~6年頃が最盛期で約百羽と推定された。その後又数が減り,昭和31年には20羽となった。昭和33年の調査では少くとも7巣,15羽,昭和34年には8巣17羽が棲息する事が判った。
6.福井県下でコウノトリの繁殖が初めて確認されたのは昭和32年で,武生市と小浜市の2ヶ所であった。同地にはその後毎年営巣している。確認された数は昭和32年8羽,昭和33年6羽,昭和34年7羽であるがその中3羽は死亡が認められている。
7.コウノトリの保護については現在未だ充分な対策がたてられていないが,次第に地方の人々の関心も高まりつつある。現在保護の対策として次の事が考えられる。
1.農薬の使用制限2.農薬の害を受けない給餌場の設置3.営巣場所としての林の保存4.人工営巣場所の設置5.サギ類との関係の調査

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