山階鳥類研究所研究報告
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シジュウカラの社会的組織に関する生態学的研究
III.基本群の行動圏および構成員間の優劣関係
斉藤 隆史
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1979 年 11 巻 3 号 p. 149-171

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抄録

1.本論文は基本群の行動圏および構成員間にみられる優劣関係について記述し,行動圏の大きさ,構造,基盤を明らかにし,優劣関係を決定している要因について考察したものである。
2.調査は1968年の繁殖期から1974年の非繁殖期までの間,赤坂御用地において行った。調査地は主に常緑および落葉広葉樹からなっている。調査地内に生息するほぼすべての個体は標識され,その経歴が明らかになっている。
3.基本群の行動圏は主要地域と副次地域に分けられ,前者は基本群が単独で行動する地域であるのに対して,後者は複合群として行動する地域である。行動圏の大きさは0.7haから15.9haまでで,平均は5.5haであった。
4.主要地域はさらに中心部と周辺部に分けられ,中心部は最も好適な採食場所である採食活動中心点を含んでいる。主要地域は隣接群の間で重複するが,採食活動中心点は決して重複しない。
5.主要地域の大きさは0.5haから3.9haであり,平均は1.6haであった。この地域はその群に属する成鳥の繁殖テリトリーを中心に形成されている。その結果,その大きさはその群に属する成鳥の数と密接な関係があった。
6.基本群の形成過程において,成鳥は繁殖後も彼らのドミサイルに留まっていて,その後に若鳥が成鳥のドミサイルを彼らのドミサイルとして選定するので,行動圏の主要地域は構成員のドミサイルが重複した地域であると結論できる。
7.同性間では成鳥が常に若鳥よりも優位であり,行動圏の主要地域における成鳥の先住効果がこの関係を決定する主要な要因と考えられる。同年齢間では雄が常に雌よりも優位であり,これは雄が雌よりも攻撃的であることと体が大きいことに起因していると考えられる。
8.二羽以上の同性の成鳥を含んでいる群では,それらの成鳥間の優劣関係は場所依存的であった。これは基本群の行動圏の主要地域がその群に属するすべての成鳥の繁殖テリートリーを含んでいることによる。
9.同性の若鳥間の優劣関係は,基本群が形成される以前に決定されていると考えられ,基本群形成後も一定に保たれる。おそらく,主要地域に対する先住効果と体の大きさが優劣関係に影響しているものと思われる。
10.大部分の基本群では同性の成鳥は一羽しか含んでいないため,構成員間の優劣関係は逆転することなしに,冬の間維持された。
11.この優劣関係を考慮に入れれば,一つの基本群の構成員は互に個体識別していることは明らかであり,主にドミサイルの重複に基づいた構成員間の結び付きは,個体識別によってさらに強化されているものと考えられる。

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