山階鳥類研究所研究報告
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冬期におけるカワラヒワの留鳥と渡り個体群間に見られる住み場所の違い
中村 浩志
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1979 年 11 巻 3 号 p. 189-218

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抄録

1.京都付近では冬期,この地域で繁殖する留鳥のカワラヒワの他に,渡りのカワラヒワとオオカワラヒワが飛来する。これら3者の関係を明らかにするため調査を行なった。
2.留鳥のカワラヒワは,冬期を通じ林緑地域に高い定住性を持つ。多くの個体は番いとなっており,たえず離合集散するまとまりの少ない群れをつくり,畑•水田•林などさまざまな場所を採食地とし,餌内容は多様である。
3.渡り性のカワラヒワは,冬期主として開放地にまとまりを持った群れを形成し,おのおの場所に応じた特定の餌を,すべての個体が食べ,また集団ねぐらをとる。これらの個体の体の大きさは,留鳥のカワラヒワのそれよりもやや大きい。
4.オオカワラヒワは,秋と春にのみ多数出現する。生息場所,群れの状態,餌内容,ねぐらなどは,渡り性のカワラヒワと類似している。
5.多数の標識個体について定住性•移動•消失状況を調べた結果,以上3集団に属する個体が混合する群れは少なく,殆どは上記のように分かれて生息していることが確認された。また,留鳥のカワラヒワはすでに冬期からそれぞれの繁殖地近くにきわめて高い定住性を持つこと,渡りのカワラヒワも冬期開放地に比較的高い定住性を持つこと,さらに春先にたちよったオオカワラヒワの群れは,短期間に個体がたえず入れかわっていることが明らかにされた。
6.九州の東串良と熊本で短期間の調査を行ない,留鳥のカワラヒワと渡りのオオカワラヒワとが,それぞれ別の群れを形成していることを見い出した。
7.3つの個体群が分かれてすんでいる機構について若干の考察を行なった。留鳥群の林緑への定住は,すでに形成されている番い関係に関連するところが多く,また2つの渡り群の開放地での生息は,一時的に多量に得られる餌と関連するものと推定できる。同時にこの分離には,相互関係による生活空間の分けあいが関与しているのではないかと判断できる。

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