山階鳥類研究所研究報告
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北太平洋亜寒帯域におけるハシボソミズナギドリの餌生物
小城 春雄窪寺 恒己中村 一恵
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1980 年 12 巻 3 号 p. 157-182

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抄録

北半球の夏季に亜寒帯海洋前線(Subarctic Boundary)を乗越え一時的に亜寒帯海洋生態系の栄養系の上位階層としての機能を発揮するハシボソミズナギドリ(Puffinus tenuirostris)の胃内容物より餌生物を海域毎に明らかにすることを目的とした。
試料は1970~1978年の主に夏季,オホーツク海,北太平洋およびベーリング海で,調査船により行なわれたサケ•マス流網試験操業時にサケ•マス類と共に罹網し溺死したハシボソミズナギドリ439羽である。胃内容物中に見出された餌生物は,魚類およびイカ類の幼稚仔,橈脚類,オキアミ類,端脚類,エビ類,および有殻翼足類等であり,いずれも小型の餌生物が大部分を占めた。
西部亜寒帯環流域(Western Subarctic Gyre)および亜寒帯海流域II(Subarctic Current II)では,植食性動物プランクトンである橈脚類のCalanus cristatusが捕食されていた。このことはハシボソミズナギドリは食物連鎖の低次段階に属する生物をも餌生物として利用可能であることを示唆している。
ハシボソミズナギドリは長距離の渡りの過程で通過する様々な海洋環境の表層に豊富に生息する生物群集を餌生物として利用できる幅広い食性を持つと推定される。このことは,個体数も多く,また寿命も長いハシボソミズナギドリの個体群維持にとって重要な特性と思われる。

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