1984 年 16 巻 2-3 号 p. 114-135
茨城県水戸市において,本州以南で繁殖地を南下拡張しつつあるハクセキレイと在来繁殖種であるセグロセキレイの繁殖生態と,両種の種間関係について調査した。
1.市街地およびその周辺におけるハクセキレイの繁殖期は4月から7月であり,セグロセキレイのなかで同じ環境に繁殖する個体の繁殖期と大きく重複した。両種とも市街地周辺では建造物に営巣し,同じ巣場所を利用することもあった。
2.ハクセキレイ雄は繁殖仕事のうち,巣造りの8%,抱卵の6%,給餌の36%,糞処理の28%を分担した。このうち抱卵と給餌への貢献は,セグロセキレイ雄の貢献より少なかった。
3.両種の雛への主要な餌グループの2つのうち1つは同じであり,ガガンボ科であった。
4.繁殖期を通じ,セグロセキレイはハクセキレイに対し力関係において明らかに優位であった。セグロセキレイのハクセキレイに対する攻撃性は,同種に対するように完全なものではなかったが,ハクセキレイの抱卵分担を減少するに十分であった。この攻撃性は,両種の繁殖分布の重複部における生息地分離の一因となっていると考えられた。