山階鳥類研究所研究報告
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鳥類保護と都市環境
鳥のすめる街づくりへのアプローチ
前田 琢
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1993 年 25 巻 2 号 p. 105-136

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抄録

経済•生産性重視の開発手法のもとにつくられてきたわが国の都市は,自然環境にきわめて乏しく,野生動物が生息できない非生物的な環境によって構成されている。しかし近年,多様な生物が生息できる環境を都市に創造し,人間と生き物の共存を図ることが要望されつつある。そうした生物的な都市を実現するためには,野生動物とその生息環境の関係を知り,街づくりへ展開していくことが必要である。本論では,陸上性鳥類群集を対象に,その特性と都市の様々な環境要因との関係についての生態学的研究を整理,分析し,鳥類の生息を考えた都市環境形成の方策について検討,提案を行なった。主な論点は以下の三つに要約される。
(1) 都市の鳥類群集は植被量,植生構造,植物種構成,植被の分散度など,植生に関係した要因に影響されており,中でも植被量の増加は多様性の高い群集を都市に導くために特に重要であると考えられる。市街地の植被を増やすためには,住居の集合化,袋道を活用した道路網への転換,駐車場の地下化,屋上や壁面の緑化といった植被スペースを増やす設計や,過度な剪定を行なわない植栽管理方法の採用などが望まれる。
(2) 都市に島状に存在する緑地の鳥類群集は,緑地の面積,孤立性,形状などの地理的要因と関係を持つ。これらの関係は更に,地域,季節,分析方法などによっても大きく変化すると考えられるため,鳥類保護のためのよりよい緑地の特性を明らかにするには,地域に即した数多くの情報を得る必要がある。しかし,島嶼生物地理学理論による提案(Diamond 1975)も現時点でのひとつの指針として有効であり,その観点から見ると,広大な緑地帯を確保する田園都市(Howard 1902)は鳥類の生息に好ましい都市形態であると考えられる。
(3) 都市の鳥類は建物などを営巣場所として利用することができ,また給餌や巣箱の設置など,人間による積極的な援助を受けることができる。しかし,こうした人工的資源への依存は,一部の鳥種のみの繁栄につながるとともに,自然資源の利用に基づいた本来の生態を失う可能性があるため,極力減らすべきと考えられる。同様に,土地固有の鳥類群集や生態系に大きな影響を与え得る外国産種の導入•定着にも,十分な防止策を講じる必要がある。

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