山階鳥類研究所研究報告
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ニュージーランド•モツアラ島におけるハイイロミズナギドリの表層土に及ぼす影響
岡崎 正規押田 友紀子Richard MalonyJohn Warham
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1993 年 25 巻 2 号 p. 137-143

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抄録

ニュージーランド•モツアラ島においてハイイロミズナギドリ(Puffinus qriseus)の表層土の化学的性質に対する影響を,島内3地域それぞれに設置した3つのコドラートを比較することによって明らかにした。化学分析用土壌試料はハイイロミズナギドリが営巣を開始する直前の1990年9月27日にコドラートの左あるいは右隅下方5cmの距離(巣穴入口から55-60cmの距離)から表層土(0-20cm)を採取した。1.巣穴の入口から50cm以内で,リターは存在するがハイイロミズナギドリの踏み付けのない地点(巣穴コドラート)の表層土のpH(平均5.08),EC(平均0.79mScm-1),有効態リン酸(平均2681mg P2O5kg-1)と,巣穴から20-50m離れ,ハイイロミズナギドリの影響が少ないとみられる地点で,リターを保持し,植物が存在する地点(リター存在コドラート)およびリター存在コドラートと同じ条件であるが,本研究を始めるに当たってすべてのリターと植物を1990年7月3日に除去した地点(リター除去コドラート)の表層土のpH(6.52,6.53),EC(0.51,0.48mScm-1),有効態リン酸(149,138mg P2O5kg-1)とは有意な差異が認あられ,ハイイロミズナギドリの糞が土壌の化学的性質を変化させることが示された。2.リター存在コドラートとリター除去コドラートの土壌の化学的性質には有意な差異は認められず,ハイイロミズナギドリ営巣前の約3ヵ月(冬期)ほどの短期間のリターの除去は表層土の化学的性質に影響を及ぼさなかった。

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