山口県熊毛郡熊毛町八代地区に渡来し越冬するナベヅルは,戦後の47年間に250頭から41頭に減少した。減少の原因究明と越冬地保護策を検討するたあに,1983年~1985年の3年間現地での調査を行なった。ナベヅルは日中は刈り入れ後の耕作地で採餌し,渡来初期には家族単位の採餌なわばりを防衛するが,1月以降は給餌場近辺に集中し群れを形成する。夜間は山あいの田,山腹の裸地,ため池の岸辺などで集団で就時する。気温が低下すると,たあ池の利用率が上昇する。採餌場所の減少,人間による干渉,ねぐらの劣悪化などが越冬個体数減少の原因と考えられる。行政当局による給餌,ねぐらの改良,干渉の防止などが試みられているが,個体数の回復には至っていない。