ハシボソミズナギドリの推定繁殖鳥2300万羽の80%が繁殖するタスマニア本島と周辺の島々のコロニーのうち,代表的な12ヵ所のコロニーの地形を測量した結果,海岸崖地型,海岸丘陵型,海岸砂丘型,海岸平地型の4地形に分類できた.その上で,現在知られている168ヵ所のコロニーの地形を現地訪問と文献の知見に基づき上記4型に分類し,それぞれのコロニー数と専有面積を示した.
海岸崖地型が数では最も多く全体の約40%を占め,高崖型と低崖型がほぼ同数を占めた.ついで海岸平地型が24%,海岸砂丘型19%,海岸丘陵型18%の順となった.面積では海岸丘陵型が約40%を占め最も広域を占め,次いで海岸崖地型が32%,海岸平地型21%,海岸砂丘型8%の順となった.1コロニー当たりの面積の平均値は4haから20haまで大きくばらついたが,有意差はみられなかった.
ハシボソミズナギドリのコロニー立地にみる繁殖地の地形選択は,大•中型ミズナギドリ目鳥類では一般に劣るといわれる跳躍力と飛び立ち力を補うための地形選択がうかがえるが,一方,平地に立地したコロニー数とコロニー面積がそれぞれ20%以上を占めることから,平地での飛び立ちの制約は低いことが示唆される.このように,ハシボソミズナギドリ集団繁殖地の断面地形にみる幅広い選択力が,彼らに多くの繁殖適地を供給し,太平洋の優占種の一つといわれる個体数の多さを支えているものといえる.