山階鳥類研究所研究報告
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千葉県手賀沼における水面に浮く人工物上でのカイツブリとオオバンの営巣例
平岡 考
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1996 年 28 巻 2 号 p. 108-112

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抄録

千葉県手賀沼の抽水植物群落で,水面上に浮いた人工物上にカイツブリおよびオオバンが営巣した以下の5例について報告する。
巣A:ヒメガマ群落内の発泡スチロールの板の上の,産卵期から孵化期のカイツブリの巣,巣B:ヒメガマ群落内の木の板の上の,抱卵期から孵化期のカイツブリの巣,巣C:マコモ群落内の磨耗した丸太の上の,産卵期から抱卵期のカイツブリの巣,巣D:ヒメガマ群落内の木の板の上の放棄卵1卵を含むオオバンの巣,巣E:ヒメガマ群落内の自動車タイヤの上の最近まで使用されていたと考えられるオオバンの巣。
巣A,B,D,Eでは,人工物は何の支えもなく浮いており,抽水食物に囲まれているだけだった。オオバンの巣D,Eでは回りのヒメガマの葉が巣の中にたくしこまれて,巣が動かないようにするのを助けていた。巣Cでは丸太は軽く水底に接していたが,抽水食物に囲まれているため,仮に水位が上がっても移動しそうもなかった。カイツブリの巣A,Bではヒナが孵化したと考えられた。水面上に浮いた物体を巣の台座として利用することは親鳥の造巣の労力を軽減させるので,いくつかの条件がそろえば繁殖成功に資すると考えられる。

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