山階鳥類研究所研究報告
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静岡県富士川河口に漂着した釣針付衰弱アホウドリ Diomedea albatrus の栄養生態学的分析を中心とする検死結果
岡 奈理子八木 智子山室 真澄
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1997 年 29 巻 1 号 p. 67-72

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抄録

1996年3月18日静岡県富士川河口近くの海岸に衰弱漂着し,日本平動物園に保護され同月30日に死亡したアホウドリの,齢,体•臓器サイズ,栄養状態,筋肉の安定同位体比を調べた。本個体はHarrison(1985)の第1と第2段階の中間羽の幼鳥であり,脚環がないので伊豆七島鳥島ではなく尖閣列島南小島産とみられた。右脚のみずかきには末端が折れた釣針が刺さっており,筋胃内に27cmの釣糸と,2種のほどけかけたロープ状繊維計168cm(平均長12cm)からなる直径1.2cmの堅い糸球があった。また,前胃と胆嚢に各3ヵ所の突起状潰瘍がみられた。保護時の体重は,鳥島での4,5月期の成鳥個体6羽の平均体重4576g(401gSD)の70%(死亡時は67%),栄養指標となる筋肉(後肢骨筋)脂質含有率は4.6%,同含水率は69.4%であり,同じミズナギドリ目鳥類が飢餓漂着する臨界栄養値より,良好な水準にあった。後肢骨筋の安定同位体比はδ13Cが-18.2,δ15Nが13.0であった。この値は,同ミズナギドリ目ではハシボソミズナキドリよりハイイロミズナキドリに近い食地位にいたと示唆するが,保護飼育中に給餌された餌の影響も大きい。
アホウドリの漁網,釣針による死亡は,脚環装着鳥だけでも1984年以降4例が記録され,今回の例を含めると,漁具が起因するアホウドリの死亡は5例になる。アホウドリ類全体の羅網事故死は南半球同様,北半球でも多いことが報告されている。近年アホウドリ類が多く繁殖するハワイ群島で個体群の保全のための漁業規制が行われ始めたが,絶減危惧種アホウドリが繁殖,索餌のために多く分布する冬期から春期にかけて,日本近海で保護海域が策定されることが望まれる。

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