山階鳥類研究所研究報告
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日本における新たなオオハクチョウ食草
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2002 年 33 巻 2 号 p. 210-212

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抄録

旧北亜区に広い分布を持つオオハクチョウ(Cygnus cygnus)は,ほぼ完全に植物食であり,さまざまな種類の植物を食することが記録されている。通常は,入り江や河口,川の流域,湖などの見通しの良い湿地,湿地の周辺や近接の原野,農地などで採餌するので,これまでに陸生の森林植物が食草になったという記録はない。
1997年3月6日,東北海道の屈斜路湖(43°25'N,144°25'E)で越冬中のオオハクチョウを観察中,少数のオオハクチョウからなる群れが珍しい採餌行動をするのを観察した。この群れは,凍結していない湖岸の水面から岸に上がり,森に向かって数メートル歩いて行った。例年になく暖かな気候が続いたため,通常は地面を覆っている雪も融けており,このハクチョウたちは,ところどころ露出した林床で背の低いササsp.を食していた。おそらく,近寄りやすい場所にササがあったのと,枯れていないササの葉に引き寄せられたのだろう。北海道で冬期間,オオハクチョウが陸上で採餌するのはまれであり,森林で採餌するオオハクチョウが観察されるのも異例のことである。日本の北海道で観察されたこのオオハクチョウによるササの葉の採餌は,陸生の森林植物を採餌するオオハクチョウの初の観察記録であると考えられる。

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