山階鳥類研究所研究報告
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ハシボソガラス Corvus corone のなわばり非所有個体の採食地と塒の利用
吉田 保晴
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2003 年 34 巻 2 号 p. 257-269

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抄録

ハシボソガラスのなわばり非所有個体の採食地と塒の利用を調べるため,長野県の伊那盆地において個体識別した108個体を1992年3月20日から1993年12月31日まで追跡調査した。そのうちの10羽のなわばり非所有個体には電波発信機を装着し追跡調査した。採食地や塒に集合している群れは,識別の有無に関わらずその個体数や行動について調べた。捕獲したなわばり非所有個体96羽のうちの30羽が1歳以下の若鳥であり,66羽が2歳以上の成鳥であった。なわばり所有個体は,集団塒で就塒するようになっても日の出前後には自分のなわばりに飛来し,一年中自分のなわばりにいた。なわばり所有個体のなわばりの配置は一年中ほとんど変わらず,隣接したなわばり所有個体と重なり合うことはなかった。なわばり所有個体はなわばり非所有個体によって,自分のなわばりを追い出されることがあった。追い出されたなわばり所有個体は,その後なわばり非所有個体の群れの中に入り生活した。なわばり非所有個体の採食地は,なわばり所有個体が繁殖に必要な営巣木がない河川敷や水田地帯といった開けた場所であった。なわばり非所有個体は特定の採食地を持つことはなく,一年を通して,また一日の中でも複数の採食地を移動した。電波発信機により,なわばり非所有個体は精密調査区の4ヵ所の塒を次々と変えていた。こうした塒の移動は,伊那盆地全域において観察された。なわばり非所有個体の採食地の移動と塒の移動,なわばり非所有個体の存在形態について考察した。

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