山階鳥類研究所研究報告
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泥炭地草原におけるホオジロ属の生活場所と行動圏の比較調査
中村 登流山岸 哲飯島 一良香川 敏明
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1968 年 5 巻 4 号 p. 313-336_2

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抄録

1.この調査は1968年6月14日より6月21日まで,北海道石狩太美の鳥,特に.Emberiza属の繁殖期生活についておこなったものである。鳥の個体数,生活域,行動圏の大きさ,構造,分布について比較した。
2.調査地のEmberiza属はオオジュリン(E.schoeniclus),シマアオジ(E.aureola),ホオアカ(E.fucata),アオジ(E.spodocephala)の4種である。もっとも多いのはオオジュリン(1.6羽/ha.)であり,次はシマアオジ(0.6羽/ha.),ホオアカ(0.5羽/ha.)で,アオジは少ない(0.2羽/ha)。
3.調査地域の植物相はササ型,ススキ型,ヨシ型,ヤチヤナギ型,ブッシュ型にわけられ,Emberiza4種の分布が比較考察きれた。オオジュリンはブッシュ型を除いて,巾広い棲息域を持ち,シマアオジはササ型に,ホオアカはササ型とススキ型の混合地に,アオジはブッシュ型に限定される。
4.オオジュリン行動圏はササ型とススキ型の混合地からヨシ型に伸びており,前者に営巣して,後者に採食する。巣を中心にして囀鳴地域があり,song postは草本の莖に多い。行動圏の分布はいちじるしい集中部を持っていて,そこでは隣接巣との間隔が20m位である。集中部はルーズなコロニーであって,これより近接のヨシ型の採食地へ長楕円形に行動圏を伸展させている。各個体の採食地はわかれており,同一の♂と♀の間でも異なる。採食地でも♂の間に防衛行動が見られ,common feeding groundではない。
5.シマアオジ行動圏は大きい。♂の囀鳴地域は二分しており,1つは中央囀鳴地域で,巣の近くにあり,もう1つは出先き囀鳴地域で,巣から100-200mはなれ,隣接pairsの♂の出先き地域と接している。営巣地は丈の低いササ型の草原であって,song postは小灌木のトップである。接近した営巣も可能である。行動圏は大きくひろがり,隣接部では,たたかいやsong duelがしばしば認められる。
6.ホオアカ行動圏はススキ型とササ型の混合部にあり,丈の低い草原であるが,song postは小灌木のトップにある。オオジュリンとの重複はいちじるしいが,シマアオジとの重複はさけているようである。巣は間隔をあけて配列し,ルーズなコロニーはつくらない。囀鳴地域は巣を中心にしてできているが,小灌木を求めるため,オオジュリンのように集中しない。採食地はササ型と裸地の散在地であって,囀鳴地域と関係なく,また♂と♀と異なる。営巣地はオオジュリンと重複するが,採食地は全く異なる。
7.オオジュリン•コジュリン型の行動圏は,丈の高い草地での生活によって,圧縮可能であり,広大な採食地に接する部分ではルーズなコロニーを形成し得る。
8.ホオアカ•ホオジロ型の行動圏は間隔をあけて分散するもので,コロニーはできない。この点で生活域のちがいを通してオオジュリン•コジュリン型とは別の系統の分化を示したものと思える。
9.シマアオジはオオジュリンよりもホオアカに類似した生活域を要求しており,ホオアカとの間に競争があると考えられる。

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