山階鳥類研究所研究報告
Online ISSN : 1883-3659
Print ISSN : 0044-0183
ISSN-L : 0044-0183
ホオジロ属5種の越冬生態の比較研究
山岸 哲中村 登流須山 才二飯島 一良牛山 英彦香川 敏明
著者情報
ジャーナル フリー

1969 年 5 巻 6 号 p. 585-601

詳細
抄録

1.この調査は1969年1月2日~5日に,千葉県印旛沼で行なった。
2.調査地は,次の3つに分けた。(1)山麓地帯,(2)水田地帯,(3)沼沢地帯である。
3.調査方法は山麓地帯と水田地帯についてライントラセクトセンサス法をおこない,沼沢地帯では平行したトランセクト法と,追い出しマッピング法をつかった。
4.調査した種はアオジ,ホオジロ,ホオアカ,カシラダカ,オオジュリンである。各種はそれぞれ特有の棲息域をもっている。
5.アオジは山麓地帯に多く,水田地帯の中では溝とか,松林のヘリに出てくる。開けた地上で採食し,ブッシュの中へ隠れる。ほとんどペアーで出現している。
6.ホオジロは3つの地域に出現するが,その中で乾燥した荒地状の部分をえらんでいる。ペアーで出現するが,10~20羽の群れもつくる。
7.ホオアカは1例のみである。沼沢地帯の水田のあぜにあらわれた。
8.カシラダカは3つの地域に出現する。その中であまり乾燥していない地上をえらんでいる。一方では山麓地帯の田の表面にいて林内へ隠れ,他方では沼沢地帯のヨシ,ガマの倒れた地域へ大群であらわれた。沼沢地のものは倒れたヨシ,ガマの中にかくれ小グループで逃げ,高くとんで旋回するが,再びもどって地上へおりる。
9.オオジュリンは沼沢地帯に多く,水田地帯の中の小さい沼沢部にもいる。採食地,第1避難所,第2避難所をもっていて,3つの区分をもつ単位行動圏がある。水ベリ又は水のついているイネの上で採食している。そして避難所はヨシの中である。オオジュリンの大きな集合は,大きな採食地と関係して,単位行動圏がいくつかできるのである。
11.沼沢地帯でのオオジュリンとカシラダカは生態的に分離している。即ち,一つには採食場所がちがっており,一つには群れの構造がちがっている。オオジュリンは高桿植物で採食ができるが,カシラダカは地上へおりる。オオジュリンは採食場所と避難場所をわけて個々バラバラにその間を往復している。しかし,カシラダカはその区別がなく,食物とするイネ科とカヤツリグサ科の分布の大きさに応じて大きな集合をつくっている。
11.オオジュリンとカシラダカの採食行動を比較すると,オオジュリンは高桿植物の桿によこどまりすることができる。これはオオジュリンが水湿地の桿に適応していることを示していて,越冬地でのオオジュリンとカシラダカは適応型としてのちがいをもとにして場所をわけているのである。

著者関連情報
© 財団法人 山階鳥類研究所
次の記事
feedback
Top