山階鳥類研究所研究報告
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カワラヒワ個体群の年変動及び生活場所の季節的変化に関する研究
中村 浩志
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1969 年 5 巻 6 号 p. 623-639

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抄録

1.1966年8月から1968年8月の2年間,長野県上田市から坂城町にかけ千曲川流域でコカワラヒワ(Chloris sinica minor)の個体数変動および生活場所の季節および日周変化をline transectセンサス,日周行動観察,区画終日センサス,1,114羽の標識に基づき調査した。
2.個体数は繁殖期後(6~9月)(1967年8月48羽で4月の2.4倍)と冬期(11~3月)(最高は第1年84羽で4月の4.4倍,第2年125羽で7倍)に高く,繁殖期の5~6月に最低を示し,14~18羽が春の繁殖羽数である。第2年は第1年より平均1.6倍個体数が多かった。
3.この二つの個体数変動は性質を異にした増加であり,一方は,6~9月にかけて新しくこの地域で生産された若鳥および成鳥の地域的な集合による増加である。他方は11~3月にかけての他地域からの移入による増加であり,雪の多い北陸地方からの移動によるものと考えられる。
4.年間で最大の群形成がみられるのは9~10月であり,この時期は換羽期にあたり河原に集中し草の上で採餌し,換羽のため樹上の休息時間が多い。繁殖後各地に家族群を単位とした小さな群の形成がみられるが,これがしだいに特定の地域に集合して換羽期の大合同群を形成するのである。
5.換羽期後の11月から4月にかけて群はしだいに小さくなり分散する。繁殖期の5~6月には群は形成されない。
6.生活場所には明白な季節変化がみられる。非繁殖期は河原が主な生活場所であり,秋から草の種子が地上に落ち地上生活,採餌時間の割合が最も高い。繁殖期には村落を営巣地とし樹上生活,空中生活が多くなり,畑地が主な採餌場所で草の上での生活および採餌行動の割り合が多くなる。
7.非繁殖期から繁殖期にかけての時期には,群の集合状態,生活場所に日周変化がみられる。朝は群の分散がみられ,村落内で番または小さな群で行動しているが,午後になるに従って河原に集合するようになり非繁殖期の群生活にもどる。

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