山階鳥類研究所研究報告
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アカハラダカAccipter soloensis(Horsfield)の蕃殖生態
権 奇政元 炳〓
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1975 年 7 巻 5 号 p. 501-522

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抄録

1.本調査は,1974年6月25日から8月5日まで42日間に亘って京畿道楊州郡榛接面光陵林内の約60.8haの面積に蕃殖したアカハラダカAccipter soloensisの8巣に対する蕃殖生態と,8月27日から9月17日まで蕃殖後の密度を調査したものである。
2.8巣は平均11.7mの地上高さの樹幹中層部樹枝に営巣し,39.5×34.6cm(外径),17.1cm(高さ)の平たい皿型の巣であり,巣立ち後4巣の重さは平均661gであった。
卵は白色卵形であり,8巣33卵の測定値平均は36.9(長径)×29.6cm(短径),卵の重量は平均17.2gであった。
3.抱卵期間は,8巣33卵の調査で平均19.5日であった。1腹の卵数は4.1卵で,親が抱卵のため巣を出入した回数は計269回で,雄と雌を合わせた1日の平均出入回数は28.9回であった。抱卵期間のあいだ親の巣外時間と巣内時間の比率は,1日平均雌が,41.8%,雄が30.1%であった。
4.8巣33卵中,6巣23卵が孵化し,平均孵化率は65%であった。
5.育雛期間は,5巣21雛の調査で平均19.4日であった。雌と雄を合わせた親の1日平均給餌回数は31.7回で,孵化後14日目が47.3回でもっとも多く,雄より雌の給餌回数が多少多かった。
6.育雛期の親の在巣時間は,1日平均37.2%で,雌が雄より6.5%長く,雛が成長するに従って減少した。
7.育雛期の雛の成長率は,1日平均全長は,6.54mm,翼長は5.74mm,尾長は3.29mm,体重は孵化直後平均17.83g,巣立ち直前は142.49gであり1日平均成長率は6.67gであった。
8.5巣19雛の巣立率は75.8%であった。
9.営巣地を2地区に分け,各区で1巣,計2巣8雛を調査した。育雛期の食物は動物質だけであり,主食はカエルであったが,全食餌物に対するカエルの比率は64.74%と75.32%であった。
10.採食地は,巣から平均165m距離以内の殆んど一定の水田であった。
11.8巣の親が占めていた平均行動圏は2.95haであり,8巣の全体の行動圏面積は23.6haで全調査面積の38.8%に該当した。8番の勢力圏(テリトリ)の平均面積はで1.05haあり,8番を合わせた勢力圏の全面積は全行動圏面積の35%を占め,採食地は勢力圏外にあった。
12.勢力圏に侵入した鳥類は,26種378個体であった。種別比率は,シジュカラ18.78%,コウライウグイス11.38%,ブッポウソウ9.79%,アカハラダカ8.73%,アカゲラ7.67%,マジロキビタキ6.35%,ホオジロハクセキレイ5.03%であり,雌と雄の防禦比率は雄が平均69.28%,雌が平均21.37%で,雌と雄が共同防禦した比率は9.35%に過ぎなかった。
13.蕃殖後1日おきに11日間に亘って調査地内で観察したアカハラダカは計125個体であった。其の中,親が39.20%,幼鳥が60.80%を占めていた。9月17日に終認した1個体の観察以後には見かけられなかった。

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