山階鳥類研究所研究報告
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多摩川中流域におけるハクセキレイの越冬生態について
渡辺 通人丸山 直樹
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1977 年 9 巻 1 号 p. 20-43

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抄録

ハクセキレイの生活様式を明らかにするため,多摩川中流域において亜種の一つであるMotacilla alba lugensの越冬生態の調査を行なった。調査は,中央線多摩川鉄橋上流の約6haの地域ならびに残堀川の一部で,1972年11月から1974年3月にかけて7回にわたって行なった。
1.ナワバリおよび防衛されない採食地は11月までには完成し,それは渡去直前まで維持されるものと考えられた。
2.ナワバリは1羽または2羽で占有され,この2羽の組み合せは,羽ふるわせ誇示•垂直飛び誇示の関係から雄と雌であるように考えられた。そして,これらのナワバリの間を放浪しているナワバリ非占有個体がいることが確かめられた。
3.ナワバリ防衛行動には,confronting, threat, chase, fight, alertの5っのパターンが認められた。この地域のナワバリ占有個体は,ナワバリ以外に防衛されない1つまたはそれ以上の採食地を持っていることが考えられた。
4.ナワバリ占有固体の示したobservation-area curveには,ロジスティク曲線型,三次曲線型,直線型の3型が認められ,これらの型を示す個体数には季節変動•年変動がみられた。
5.また,feeding siteの面積にも季節変動•年変動が認められたが,これらの変動とナワバリ定着率あるいはナワバリ面積とは直接の関係があるとは考えられなかった。しかしながら,いずれの場合もハクセキレイの活動はfeeding siteに集中していた。
6.ナワバリ面積の平均値は,1972-1973年冬の場合3364m2であり,1973-1974年冬の場合4519m2であった。
7.就塒行動は,日没前後30分の時間帯に集中して観察され,北方へ去る個体が多かった。
8.ハクセキレイは,この地域においては冬の間セキレイ科内で最も優勢な種であると考えられた。また,ハクセキレイのpredatorと考えられる鳥に対する攻撃行動も観察された。

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