山階鳥類研究所研究報告
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ノグチゲラの生態,行動学的観察及びその保護
小笠原 〓池原 貞雄
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1977 年 9 巻 2 号 p. 143-158

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抄録

1)ノグチゲラの生態調査を繁殖期の4月21日から27日にかけて,主に与那覇岳と伊湯岳で行った。調査は環境庁の依頼で行った。
2)ノグチゲラは沖縄本島中央部に位置する名護岳以北に分布していたが,現在の本種の分布の南限は伊湯岳となっている。
3)著者等はノグチゲラのつがいの採餌範囲をほぼ明らかにすることが出来た。この範囲はつがいの活動範囲であって,明白な「なわばり」を意味するものではない。
4)ノグチゲラは与那覇岳における観察から,少なくとも,この時期には早朝(5時半から7時半)と夕方(16時から19時)に最も活動的である。
日中には,ノグチゲラは伐採路地にも現われ,静かに採食しているが,原生林中で最も活動的に採食していた。
5)ノグチゲラのドラミングは主に早朝(5時から7時の間)と夕方(16時半から19時半の間)に聞かれた。
日中でも時々,前述の採餌範囲の一部でドラミングを聞いたが,これは枯枝で採食するためのハンマリングと思われた。
6)濃霧でつつまれたこの密に茂った森が,少なくとも,ノグチゲラの好適生息環境と思われる。すなわち,ノグチゲラの本来的な生息環境は,伊湯岳に自然状態で広く残されている米軍のトレーニングのための地域のような,密に茂った高湿な森林であると思われる。
7)ノグチゲラの繁殖期は2月から6月の間で,本種はイタジイやタブなど半分枯れている古い木の幹に新しく穴をあけて巣を造る。
8)著者等はHachisukaほか(1953),Kuroda(1971),Short(1973)やIkeharaほか(1975)による本種の個体群の推定値を比較しながら,ノグチゲラの個体群密度の推定を試みた。
9)世界的に貴重で,まれなノグチゲラをいかにしたら保護し,いかにしたら本種の生息地を保全出来るかを考察した。

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