山階鳥類学雑誌
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環境ストレスがトキ(Nipponia nippon)の育雛行動に及ぼす影響
席 咏梅路 宝忠尾崎 清明服部 眞彰
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2003 年 35 巻 1 号 p. 30-38

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抄録

雌雄のトキは産卵後交代して抱卵するが,その後孵化時にヒナを殺したり,巣からヒナを遺棄することが観察されている。この異常な育雛行動の原因を明らかにするために,緑色ビニール製ネットの繁殖用ケージを自然の棲息環境に近い森の中に設置して,トキのF1とF2の世代から5組の成鳥ペアを選びそのケージの中で飼育し育雛行動を調査した。すべての行動はビデオ撮影によりモニターした。3年間で13羽のヒナが孵化し,ネットの繁殖用ケージの中で親鳥は順調に育雛を行ったが,通常の繁殖用ケージ(スチール製)では正常な育雛行動は見られなかった。この観察結果から,ヒナを殺すという行動は人工環境に適応できないために引き起こされる環境ストレスによるものであることが示唆された。したがって,トキの正常な育雛行動およびヒナ羽数増加をもたらすには環境条件がきわめて重要な要因になることが考えられる。

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