1986 年 34 巻 6 号 p. 468-471
酵素, 微生物(有機化学の観点からすれば, これは生き物というより, 酵素のつまった袋と単純化してしまってよい)の有する潜在能力は, 有機合成にとってかなり魅力的なものになりつつある。最近, 光学活性ということが特に問題になってきているためであろう。酵素は光学活性体であるから, いつも完壁にというわけではないが, 本来の基質でないものについても容易に不斉反応を行うことができる。これを利用すると入手容易な原料から, 不斉合成にとって有用な中間体を得ることができる。本稿では具体例を挙げつつ, どのような形式の反応が, 酵素を利用して可能であるかを簡単に解説する。