化学教育
Online ISSN : 2432-6542
合成経路設計へのコンピューター利用(<特集>最近の有機合成)
工藤 喜弘
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1986 年 34 巻 6 号 p. 472-475

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抄録

有機化合物の合成経路設計をコンピューターに行わせることは実用化され, 企業が競って導入している。経路設計というのは, 目標化合物を終点, 入手可能な物質(合成原料になる)を始点とする反応の並びを探すことである。最適解を選ぼうにも, 最適解がどれだか誰もわからない点で合成経路設計は占いと同じで, あたれば大漁(あたらなければ獲物なし)という点では釣りと同じである。この問題の障害は, 可能な出発物質の範囲を最終的に判断できるのは利用者自身しかいないが, 明確には把握していないこと, 途中の経路の数も事実上無限であること, である。そこで, 経路の広がりを合理的に抑えるために, 考える反応の種類や段階数を限定したり, 特別の方法で設定した制限の範囲内に限定したりする。出発物質が入手可能か否かは, 構造の単純さの度合で決めたり, 対話型と称して利用者にその都度判断させる, などの工夫をしている。

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© 1986 公益社団法人日本化学会
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