1986 年 34 巻 6 号 p. 480-483
生物は, 生まれ, 生長し, 増殖し, 死んでいく。生物に特徴的なこのような現象を大きく支配しているのは, 生物活性物質と総称される化学物質である。抗脚気ビタミンであるビタミンB_1(オリザニン)の研究が鈴木梅太郎により大きく前進し, 植物生長ホルモンであるジベレリンの研究が藪田貞治郎と住木諭介とによって基礎をすえられたように, 日本の化学者は生物活性物質の化学に大きく貢献してきた。本稿では, 生物活性物質の化学と有機合成化学とのかかわりを, ホルモンやフェロモンなどの研究実例をとおして示す。