2012 年 50 巻 10 号 p. 756-760
21世紀は生命科学の時代と言われる.20世紀には物理学と化学の基本原理が明らかにされ,それに基づき分子のレベルで生命体を研究できるようになり,多くの発見が期待できるからである.20世紀後半の生命科学の発展初期に遭遇した私は,胸をときめかして研究生活を過ごした.しかし,「女は賄をやっとれ」とか「女でしゃばるな」という考えの方々が学界運営の中心におられた時代であったため,女性が自由に研究できるような雰囲気はなく,学界は男社会であった.このような時代に,好奇心に引っ張られて,逆風を気にせずに試行錯誤を繰り返して漂流した.それらの研究の一部が定説を偶然書き換えることになった.ここではその経緯をたどってみる.