2013 年 51 巻 9 号 p. 615-621
メタボロミクス(メタボローム解析)は近年の分析装置の性能向上に伴い,急速に確立が進んでいる研究手法である.メタボロミクスのターゲットである低分子化合物は様々な生物活性に直接かかわる要素であり,これらを網羅的に調べることによって,未知の生物機能の解明につながる可能性がある.近年のメタボロミクスを用いた研究には,生理現象の解明などの基礎研究に加え,バイオマーカーの発見など医療分野における応用例が多く認められる.一方で低分子化合物は食味や色など農産物や食品の品質にかかわる分子でもあることから,メタボロミクスは農業・食品分野でも十分に応用が可能な技術であることが示唆される.本稿では,メタボロミクスについての概説から実際の農業・食品分野への応用例や可能性を述べる.