化学と生物
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解説
単孔類,有袋類ミルクオリゴ糖の種特異的進化と生存戦略
浦島 匡
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2016 年 54 巻 3 号 p. 159-169

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抄録

単孔類(カモノハシ,ハリモグラ)や有袋類(カンガルー,ポッサム,コアラなど)の乳では,多くの有胎盤類(ヒト,ウシなど)とは異なり,ミルクオリゴ糖の方がラクトースよりも優先的である.有胎盤類の乳仔がラクトースを主要なエネルギー源としているのに対し,単孔類や有袋類の乳仔はミルクオリゴ糖をピノサートーシスかエンドサイトーシスで小腸細胞内に取り込み,リソソーム内のグリコシダーゼの働きで単糖に分解し,エネルギー源とする.単孔類のシアル酸含有ミルクオリゴ糖に付加するN-アセチルノイラミン酸は,4位がO-アセチル化した固有の形をしているが,そのことで細菌の生産するノイラミニダーゼへの加水分解抵抗性を付与する.それには乳首がなくて皮膚の上に乳を分泌する単孔類において,乳が細菌の増殖源にならないメカニズムが潜んでいる.単孔類や有袋類の固有のミルクオリゴ糖には,それらの繁殖戦略や子育て戦略との密接なかかわりがある.

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© 2016 by Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
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