2017 年 55 巻 12 号 p. 810-816
エピゲノムとは生物がもつDNAメチル化やヒストン修飾などの全情報であり,全塩基配列情報であるゲノムと同様に細胞分裂を経ても遺伝しうる.エピゲノムの変化はゲノムへのアクセシビリティや機能,クロマチン構造を変化させる.したがってエピゲノムの変化は塩基配列を変化させることなくエピジェネティックに遺伝子発現や表現型の違いを生み出すことができる.近年ゲノム多様性は積極的に作物育種に取り込まれている一方で,エピゲノム多様性に関する知見は限られており,作物育種への利用にはほど遠い.本稿ではモデル植物であるシロイヌナズナにおけるエピゲノム多様性とその生物学的意義に関する研究について紹介する.