化学と生物
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解説
代謝レギュロンはいかに確立したのか?
代謝進化のリクルート説とEvo-Metaへの展開
庄司 翼
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2018 年 56 巻 10 号 p. 671-677

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抄録

植物は,比較的単純な化合物から,複雑な化学構造を有する多種多様な二次代謝産物を生合成・蓄積する能力をもっている.二次代謝系は,環境条件や発生段階などに依存してダイナミックに制御されている.特定の生合成系を構成する遺伝子バッテリー(battery)は,しばしば共通した転写レベルでの制御を受け,レギュロン(regulon)を構成している.生合成酵素やトランスポーターなどの二次代謝系遺伝子の同定に,共発現解析などが盛んに活用されている.DNA結合性タンパク質である転写因子は,標的遺伝子のプロモーター領域に存在する比較的短いシス制御配列(cis-regulatory element)を特異的に認識し,基本転写因子やクロマチン構造などへの作用を通じて,RNAポリメラーゼIIによる転写開始の頻度に,正または負に影響を及ぼす.本稿では,いくつかの防御性二次代謝系に共通して機能する転写因子とそれらが統括する代謝レギュロンについて解説し,進化的に保存された転写因子がレギュロンの確立・進化に主導的な役割を果たしている可能性について論考する.

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© 2018 公益社団法人日本農芸化学会
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