2018 年 56 巻 10 号 p. 651-658
藻類や植物の葉緑体は光合成によって地球上のほぼすべての生命活動を支えている.葉緑体には,シアノバクテリア様の祖先から引き継がれた独自の葉緑体DNAがあり,これらは光合成装置の構築や植物の生存上必須な要素である.葉緑体DNAは裸でストロマを浮遊するのではなく,多様なタンパク質によって折り畳まれて“核様体”を構築する.葉緑体核様体は,いわば葉緑体にとっての「染色体」であり,細胞核の場合と同様に,葉緑体DNAの複製・分配の基盤である.この葉緑体核様体構造がもつ進化学的,形態学的なダイナミズムについて俯瞰する.