2019 年 57 巻 12 号 p. 722-727
食品の加工や調理工程で新たに生成する香りのうち,メイラード反応で生成する香りは一般的には高嗜好性を示し,“おいしい香り”として人々に認識されている.しかし,時にメイラード反応で生成される香りが食品の嗜好性を低下させることもあるため,非常に複雑な機構をもつメイラード反応を効率的に制御し香りの生成を抑制することも必要である.本稿ではまず,食品におけるメイラード反応とそれによって生成される香り成分を解説し,メイラード反応で生成されるオフフレーバーとその制御についての研究成果を紹介する.また,メイラード反応によって生成される高嗜好性を示す香気成分は,嗅ぐことにより生体にさまざまな影響を与えることが近年明らかになってきている.そこで,香りによって生理作用が引き起こされるメカニズムを解説する(コラム)とともに,メイラード反応で生成される香り成分の新たな機能性についての研究成果を紹介する.