2019 年 57 巻 8 号 p. 484-491
サソリは大きなハサミと尻尾の毒針を使って獲物を捕らえる.このような独特の形態とダイナミックな行動によって古くから人々の興味を引いてきた.しかし研究者にとってのサソリの魅力は「毒」自体にある.生存競争に負けないために,一部の生物は武器となる毒を作り出した.長い進化の過程で磨き上げられた生物毒は鋭い切れ味をもち,一瞬にして獲物の動きを止めることができる.サソリもこのような毒を多くもつが,これらは役割に応じた生理活性を示すことができるよう巧妙に設計されている.本解説においては,サソリ毒に含まれる多様な生理活性ペプチドについて,主にその構造に焦点を当てて紹介する.