2020 年 58 巻 3 号 p. 157-163
酵母によるアルコール発酵は古くから人々に親しまれてきた酒類製造方法であるが,発酵は酵母の性状,活性状態,また多岐にわたる生化学反応がかかわる複雑な現象で不明なことが多く,経験に頼って制御しているのが現状でありその解明が望まれている.酵母にはビール酵母,清酒酵母,ワイン酵母といった種類があり,それぞれの酒類のつくり方に適した酵母が用いられている.世界で広く飲まれ,その生産量は約2億万キロリトッルにも及ぶビールはビール酵母を用いてつくられており,ビール酵母の性質はビールの味つくりに大きく影響している.今回はビールつくりの主役ともいえるビール酵母について,研究の歴史に触れつつその特徴と最近の研究成果を解説する.