2020 年 58 巻 5 号 p. 271-279
植物によって生成されるmorphineやcodeineなどのイソキノリンアルカロイドは,生理活性が非常に高く,鎮痛剤などの医薬品の原料として使用されている.しかし,植物から抽出された医薬品原料は比較的高価であり,効率的な生産方法が求められている.近年,包括的な遺伝子解析により,さまざまな植物の代謝経路の詳細が明らかになりつつある.これらの発見に基づいて,合成生物学的方法を用いた微生物による植物アルカロイド生産が試みられている.本稿では,イソキノリンアルカロイドの生合成,微生物生産の研究成果,および今後の展望について紹介する.