2021 年 59 巻 6 号 p. 284-289
微生物ゲノム由来のオリゴDNAは,病原体関連分子として宿主細胞の自然免疫系を調節することが知られてきた.他方,一部のオリゴDNAは非免疫細胞の分化にも影響することが散発的に報告されてきたが,その生理学的意義は不明であった.筆者は最近,乳酸菌ゲノム配列に由来するオリゴDNAが,骨格筋の前駆細胞である筋芽細胞の分化を著明に亢進することを報告した.この筋形成型オリゴDNAは,加齢や疾患が誘発する筋萎縮の治療に有用な,新たな核酸医薬品のシーズとして期待される.本解説では,筋形成型オリゴDNAのの研究を例に,微生物由来オリゴDNAによる細胞の運命制御について紹介する.