2020 年 19 巻 p. 65-74
本研究では、第二言語としての日本語読解において、ワーキングメモリ容量と読解ストラテジーとの間の関係性を検討した。対象者は、ベトナム人の日本語学習者 46 名で、日本語習熟度は中級程度であった。本調査で、ワーキングメモリ容量を測定する日本語学習者用の日本語版リーディングスパンテスト、読解力を測る 2 種類の読解テスト、使用した読解ストラテジーの種類と頻度を調べる読解ストラテジー質問紙調査を実施した。その結果、ワーキングメモリ容量の個人差によって、使用した読解ストラテジーの種類や頻度に差があるとは言えないということが明らかとなった。これを基に、ワーキングメモリ容量が小さい日本語学習者が様々な種類の読解ストラテジーを高頻度で使用すると、ストラテジーを使用することにワーキングメモリ容量を割くことになり、文章理解につながらない可能性があることが示唆された。