2015 年 71 巻 2 号 p. I_1231-I_1236
黒潮大蛇行期を含む2004年から2013年の10年間を対象として,領域海洋循環モデルROMSをベースとした高解像度の瀬戸内海全域流動モデリングとその結果を用いた3次元Lagrange中立粒子追跡を実施し,九州・四国沖での黒潮流路変動が瀬戸内海内部の流動構造および幼稚仔分散過程に及ぼす影響を評価した.黒潮流軸距離と瀬戸内海内部の通過流量等との対応から,瀬戸内海全体の時計回り流動が潮岬・足摺岬・都井岬における黒潮離接岸状況と豊後-紀伊水道間の水位勾配の影響を強く受けて形成されることを明らかにした.粒子追跡結果に対してLagrangian PDF解析などを行い,瀬戸内海東部海域(播磨灘)からリリースされた幼稚仔分散は黒潮流路変動により強く依存し,瀬戸内海西部海域(伊予灘)からリリースされた幼稚仔は海域特有の還流と季節風に依存した分散特性を有することが示唆された.